嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
でも、あれは売り言葉に買い言葉だったはず。
あれからなにも言ってこなかったし、すっかり忘れていた。

「今、それを使うから言うことを聞け」

「そんな……」

断りたかったけど、今日の新庄くんからは有無を言わせない圧があった。
真剣で、どこか焦っている感じがする。
私は観念して、おとなしく従うことにした。

「じゃ、行くぞ。立てれるか?」

新庄くんは、私のバッグを肩にかけると、手を差し出してくる。
少し迷ったあと、渋々その手を掴む。
引っ張られるようようにして立ち上がった瞬間、私の体はなぜか後ろへ傾いた。

あっ、と思ったときには体が宙に浮いていて、頭が真っ白になる。
一瞬、なにが起こっているのか理解できなかった。
気づけば、私は新庄くんに抱きかかえられていた。

これって、女子の憧れのお姫様抱っこというやつじゃないの?

夢のようなシチュエーションがまさか自分の身に起こるなんて、想像もしていなかった。
しかも、相手があの新庄くんだなんて動揺しないはずがない。
心臓がうるさいぐらい音を立てている。

「ちょっと! 恥ずかしいからおろして」

「危ないから暴れんな。歩いて家までと思ったけど、さすがに無理だからちょっとタクシー使うわ」

そう言うと、新庄くんはそのまま私を抱きかかえたまま歩き出し、駅前のタクシー乗り場へ向かう。

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