御曹司と恋のかけひき

27話

少しドライブして、喫茶店へ入った。
レトロな感じがしながらも、重厚感があり、店にはレコードがかかり、
独特の音色を奏でている。

この店も何となく入ったのではなく、きちんと調べられていた事が察せられる。

チーズケーキが有名だよという直哉さんの言葉で、
チーズケーキと紅茶をオーダーした。
直哉さんはサイフォンで淹れるという、
こだわりのコーヒーをオーダーしている。

「開けてみて」

さっき買った、指輪の紙袋を渡される。

中には3つ指輪がはいっていて、
1つはさっき付けていた、ダイヤのついた指輪、
後は、シンプルなペアの指輪があった。

直哉さんは、あっさりペアの指輪の一つを取り、自分に付ける、
残りのペアの指輪と、さっき選んだ指輪を、私の左の薬指に付けた。

「結婚指輪と婚約指輪は一緒に付けれるタイプの物にしたんだ」

「結婚式はまだだけど、普段あまり石のついた指輪はしずらいと思ったから、
普段はそちらを付けていたらいいよ」

昨日、シーツを買いに行った時と同じ軽さで、あっさり言われる。

私は何もいえず、じーっと指輪を眺めていた。

そうしているうちに、オーダーした物が運ばれてくる、
食器にもこだわりがあるらしく、同じデザイン、大きさではなく、
私の紅茶はアンティーク風の薔薇の絵が描かれたカップとソーサーだった。

しかし、そんな食器に見入る事なく、視線は指輪に集中している。

「何カラット?」

あまりのダイヤの大きさに、最初に出てきたのは、そんな言葉だった。

「1カラット、あまり大きすぎても、万里香の細い指には合わないし、
その代わり、質は最高の物だよ」

なんでもないかのように、コーヒーを飲みながら、答えていた。

「ほら、紅茶さめちゃうよ、ケーキも食べて」

このサイズで、直哉さんにとっては小さい石だったらしい・・・

無言のまま、やっと紅茶とケーキに手を出す。

それからは、直哉さんが普段の話をするのを、ただ聞いていた。

紅茶とケーキが食べ終わった頃、
ネックレスをプレゼントされた時と同じ気持ちになる。

複雑だが、何も言わないのは自分の性格が許さない。

「ありがとう」

ぽつりと言ったのだが、直哉さんには十分だったらしい。

プロポーズもまだなのにと思っていると、直哉さんは笑顔で言った、

「結婚式場は母さんがが3つぐらいピックアップしてたから」

お母さんと直哉さんは間違いなく親子!心の中で確定する。

どうしよう、昨日から、何度も思っていた事を繰り返した。
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