御曹司と恋のかけひき

28話

喫茶店を後にして、再びドライブ、
えっと、と考える。

3か月前付き合い始め、1週間前に一緒に住み始め、
今日婚約指輪を渡される・・・
まあ、寝ちゃったけど、キスしたのだって、昨日が初めて・・・

流されているとは思っていたけど、
このままでいいの?

1週間前に、本気で好きか考えるって決めた、
その私はどこ?

ぐるぐる考えるが答えが出てこない。

それなのに、話だけはすごいスピードで進んでいく。

好きか考えたいって言ったって、もう今更って感じになっていく。

不思議なぐらい、ご両親と直哉さんには迷いがない、
私で16人目の彼女なはずなのに・・・

あ、パーティに出たのは私だけか。

私のせい?

ちゃんと待ってと言った方がいいのかな。

そう考えつつも、いつもの癖で車の中では何も話せない。

そうしているうちに、車は家に着く。

「ただいま」

直哉さんと一緒にそう言って家へ入る。

もう完全に家族。

居間へ行った時、思い切って口を開く。

「直哉さん」

ん?と振り向く。

「気持ちは嬉しいわ、でもまだ、付き合って3か月でしょ、
もう少し普通にデートとか」

「デートするのはいいけど、結婚は早くしたい」

「どうして?」

「昨日、万里香が焼いてくれたクッキーを食べて思ったんだ、
万里香しかいないって」

「クッキー作っただけで」

首を横にふる。

「僕は母さんと仲が悪かったんだ」

今までそんな風には一度も見えなかったのでびっくりする。

「母さんは仕事大事で、子供心に寂しく、そんな女性は嫌だと思った」

「でも実際付き合ってみると、
仕事を軽くとらえる女性達とは上手くいかなかった」

「母さんはお菓子を作ってくれた事なんてない」

「仕事を大事にしながらも、寂しさを埋めてくれる、
そんな女性は万里香しかいないんだ」

そういって、優しく抱きしめられる、
胸の中にすっぽりと包み込まれるような、安心感があった。

予想していなかった告白に心が揺れる。

体を重ねる事だって嫌じゃなかった、

本心から必要だと思われている、

なら、好きって思っていいよね。

そう、答えを出した。
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