御曹司と恋のかけひき

6話

夕飯は和食で、料亭の個室だった、例によって全てお任せ、
ただ、店員さんの丁寧な接客からも、かなり格式ある店だと察しられる。

焼き物に、小さくカラフルな料理がいくつも並んでおり、
見た目だけでも楽しめた。

先物から始まり、煮物、揚げ物、メイン、お吸い物など、
料理が入れ替わり運ばれてくる。

「美味しい」

「良かった」

「ランチも美味しかったけど、もちろん洋食と和食の違いはありますが、
まったく違う美味しさですね」

「うん」

「すごく繊細で、技を感るわ」

「そう言ってもらえると、連れてきたかいがあるよ」

「メインはもちろんだけど、お吸い物がこんなに美味しいなんて」

お吸い物は、だしに麩が入っているシンプルな物、
だだ、カツオや昆布で丁寧にだしをとっているのか、全く雑味がない。

「なんか、日本人なんだなって感じます」

お吸い物に感動していると、店員さんが声をかけてくる。

「だしの作りかたは、代々受け継がれている物なので、
そう言ってもらえると嬉しいです」

「やっぱり、特別な物なんですね」

「やはり、だしは料理の味の決め手になりますから」

「味あわせてもらえて、良かったです」

お礼を言っていると、店員さんは、にこやかに一礼して、
個室を去っていく。

ふと、藤沢さんを見ると、嬉しそうに私を眺めていた。

店員さんはだしを褒められて嬉しいかもしれないけど、
どうして藤沢さんが?と思っていると。

「やっぱり、君っていいね」

ますます分からない。



その後観覧車にもう一度乗り、昼間とは違う景色を楽しんだ。

家まで送るという藤沢さんを、駄目と強引に説得し、
朝待ち合わせた駅まで送ってもらう。

再び、少し困った顔をしている。

そんな顔もかわいいですよ、と心の中でだけで思い、最後は笑顔で別れた。
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