キミへ告げる想ひ
10-トキの環

1,

今から45年前1971年、ある女性がバレエのワールドコンクールを制した。

彼女の名前は水沢由紀子、19歳。

それが、歴史の始まりだった。

そのときの由紀子のワールドコンクール優勝は日本ではかなりニュースとなり、世間の注目を浴びた。

同レベルのコンクールは次は二年後に開かれる予定だった。

もちろん、日本中が彼女が出ることを期待していた。

今回のコンクールはモスクワで行われていた。

帰国後、彼女はある新聞記者のインタビューに答えていた
。
「優勝した感想を聞かせてください」

「今回、今までやってきたことが一つも無駄ではなかったことがよくわかりました。
応援してくださった皆様には本当に感謝しかありません」

「二年後に今度はフランスで同じようなコンクールが開催されるわけですが、そのあたりはどのようにお考えですか」

「もちろんそれには挑戦してみたいと思っております。
二年間という短い期間ですが精いっぱい練習して、よい結果を出せればなと思います」



この時は誰もが思っていた。
「水沢由紀子はフランスのコンクールに出場し、よい成績を残すだろう」と。


しかし、二年後のコンクール直前にあんなことが起きるとは誰も予想していなかった。
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