君の涙を拭いていいのは、僕だけ。【短編集】
「私、航のことすごく大事だなって。ずっとそばにいてほしいのは学人さんじゃなくて航だって。」
僕は、彼女の言葉に何も言えないでいた。
うれしいなんて言葉じゃ表せないくらいの何かが込み上げていて。
「今まで気付かなくて、傷つけてごめん。こんな私をすきになってくれてありがとう。航、これからもよろしくね。」
彼女の笑いは照れたようなものになっていた。
「ねえ、その表情もあの人に見せてたの?」
「え?どういうこと?」
「その表情は僕のためのものだよね」
「え?」
「彩香のこれからは、僕がもらうつもりでいくからね。さあ帰ろう。」
僕は彩香の手を引いて歩きだす。
さりげなく、つかめただろうか。
これからが、僕の勝負だ。
彼女と僕の日々はまだまだ続く、はず。
END
