あのとき離した手を、また繋いで。
「橘さんって顔を赤くするような乙女ちゃんだったんだね」
「ち、ちが……っ」
「あー!努てめぇ!モナにちょっかい出してんじゃねぇーよ!」
「あ、うるさいのが来た」
階段の方から足音を響かせて走って来た夏希を見て胸がときめいた。トクンッて可愛らしい音がした。
焦った表情の夏希に水無瀬くんが「よう」と能天気に右手をあげて言い放つ。
「お前、モナのこと口説いてないだろうな?」
「口説くわけないっしょ、お前が橘さんにゾッコンなこと知ってるわけだし」
「ならよろしい」
ボフッと火山が噴火したような感覚がして、両頬に手を添える。
水無瀬くんが言った"ゾッコン"というワードに反応した。
は、恥ずかしすぎる……。
「モナ、おはよう」
眩しい笑顔を向けられている。顔をそらしながら「おはよう」と返事をした。そしたら水無瀬くんと目が合って、なぜか笑われた。
「橘さん、可愛い……ぶふっ」
「は!?お前、やめろよ!そうやってモナのこと口説くの!」
「いやだって、この顔でそんなキャラはズルくないか?ははっ」
「なんもズルくないし」
目の前で繰り広げられる会話。すぐにでも姿を隠したい。彼らの前から消えたい。なんなんだいったい。水無瀬くんは涙を目尻に溜めて笑い続けている。
そんな水無瀬くんに「いやでもマジで」と声色を変えた夏希。目が真剣だ。
「モナは俺の彼女だから。手、出さないで」