BLUE DAYS
暫く話は続いた。最初はぎこちない会話だったが、だんだんタメ口も出てきながら、色んなコト話していた。なにを話そうと焦っていたことも、そんなこと思わなくなった。
それにいつもより早くに乗ったから、ちょっと辛かった。段々地下鉄が淀屋橋に近づくにつれて、当然人も乗車してきたけど、そんなに満員にはなっていない。僕自身その光景は目には入らない。ただただ目の前の女の子の絶大なオーラにただただ参っていた。それでも、そのオーラに圧倒される事もなく、なんだか、ほっこり暖かいとくる……。居心地のよい感じ。ずっとこの空間に居たい。そんな想いにさえ思えてしまう。
女のコが降りる淀屋橋に着かないで欲しいと思ってきた。
僕と、二人きりの空間?そんな風にも感じていた。
ただ楽しかった。
「そうなんや。大学卒業したら、どうするの?」
「まだ決めてない。」
「ふぅん。決めてないんや。何かアドバイス出来たらいいんやけどね。まだ2回生やったら、就職活動とか、少し先やもんね」
うん?また何か、顔色が一瞬変わったような気が…。今の会話、別にたわいもない会話やったんやけどな。
「まぁ、私も子ども好きなんです。」
「マジで?じゃあそっち方面の職かな?それやったら、色々アドバイス出来るかも」
「そうですよね」
って、またまたぼくは何言ってるねん。もう、会うかわからへんのに、また次会うとか何を思ってるねん。そう思ったら、何か淋しいような。そういやぁ名前を聞いてない。でもこんな状況の中で、名前聞いてもいいのかな。おそるおそるぼくは言いたいことが自然に口から出た。
「そういゃあ。名前を言ってなかったよね。」
「そうでしたよね。私の名前は、まつだふみです」
「ふみちゃんって言うんや。僕は、さはたはやとです。ってさっき名刺渡したか…ハハハ」
名刺を渡したことさえ忘れていた。それくらい動揺している。
そう、自己紹介を済ませた後、この瞬間が訪れた。
きて欲しくなかった瞬間。
女のコ、ふみちゃんが降りる駅。
「淀屋橋やで。何か、何を話したかわからへんけど。久々に朝の電車通勤が楽しかったわ。まつださん」
「そうでした。あっという間やったです。いつも、電車の中って、一人の空間やけど今日は、さはたさんのおかげで楽しかったです。今日一日がハッピーな日になりそう。うん。絶対いい一日になるわ。ありがとう」
そして、電車の速度が遅くなり始めた。と同時にやってくる別れ。
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