愛し紅蓮の瞳
じゃあ、私……本当に涼音さんに騙されたんだ。あの質問にすぐ答えられなかったから、

紅蓮に気持ちがあるって思われたのかな。

……でも、シャレにならない。


紅蓮が来てくれなかったら、危うく今頃、狼に襲われてたのに!


……もしかして、それも全部計算の上で、私を殺そうとしたってこと?


考えれば考えるほど、どこまでも恐ろしい。あんなに可愛くて、なんでもソツなくこなす良家の娘が、まさかここまで……?


それもこれも全部、紅蓮を想うが故だと言うなら、そんなの紅蓮だっていい迷惑に決まってる。

やり方が汚いんだっての。


「蘭、屋敷に戻る。ちゃんと捕まっとけよ」

「……う、うん!」


安心する紅蓮の香りと、体温。

心地いい声に名前を呼ばれると、素直な私の心臓はすぐにドキドキ加速してしまう。


会えないと何してるかな?って気になって、だけどそばに居ると、どうしていいか分からないくらいに切なくて苦しい。


近づきたい、知りたい。

だけど、どこかで紅蓮に拒絶されることを恐れている。

それはきっと……。
この気持ちはきっと……。


多分そういうことなんだろう。
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