愛し紅蓮の瞳
「なんで?」


「俺は愛だの恋だのに興味はない」


「そうじゃなくて……そうじゃなくて、紅蓮様はどうして泣いてるの?」


目の前で胡座をかき、胸の前で腕組みしている紅蓮様は、相変わらず無表情で何の感情も読み取れないけれど、


「……っ、泣いている?俺が?」



ヒシヒシと痛いくらいに、私の中に流れ込んでくる悲しい感情。


不思議な感覚。
だけど、分かる。


この感情はきっと、目の前でどうってことない顔して私を見つめる紅蓮様のものだ。


強気な態度の裏側で、誰にも言えず一人泣いているんだ。



なぜだろう、そんな気がして仕方ない。






「何となく、そんな気がしたから」


別に特別な力があるわけじゃない私には、自分でも不思議って言葉でしか表現出来ないけど、


だけど、確かに



今、貴方の心は泣いている。
そんな気がするの。


「……お前、どこの娘だ?」


「え?」


「平良か?それとも安西か?」


深くため息をついて私に問いかける紅蓮様は、何だかさっきまでとは雰囲気が違って、思わず戸惑う。



あれ?さっきまでと何が違うんだろう?
確かに雰囲気は違うけど、それが何によるものなのかが分からない。
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