狂愛彼氏
機嫌の良い優を横目で見ながら、俺は口を開く。
「お前こそ、どうなんだよ」
「ん?」
「あいつ、だったのかよ?」
すると、優は至極の笑みを浮かべた。
まるでお気に入りのおもちゃを見つけた子どものように。
それから、ポケットから携帯を取り出す。
「言わなかった?もちろん、彼女だったよ」
「へぇ……あれがね」
昨日見たあの女、確か愛麗と言ったか。
前に見た時とまるで外見はかわっていたから始め見た時は全く分からなかった。
「あんなになったのは理由があったんだよ」
「聞いたのか?」
「本当に彼女か確信を持つためにね。そんなことしなくても彼女だっていうのは分かっていたんだけどね」
しっかりと聞いてるのがこいつらしい。
ポチポチとどこかにメールを打っている。
きっと、愛麗にだろう。
「理由?」
「そ。あんな優しい子、なかなかいないよね」
どんな話を聞いたのかは知らないが、優にとって唯一になる十分な内容だったのだろう。
「………」
「あの時は、短い時間だったもんね」
パチンと優は携帯を閉じた。
そして、対して目線の変わらない俺達は顔を向けるだけで良い。
「お互い、頑張ろう」
「………」
じゃ、と優は俺を通り越してどこかに行った。