狂愛彼氏
―――――そして、今に至る。
「………はぁ、」
嬉々としながら前を歩く愛麗の後ろを身を縮ませながら歩く私。
自慢げに、満足そうに自画自賛までした愛麗は、べた褒めしてくれた。
愛麗にいいように化粧をされた自分の顔を鏡で見てみたけれど、普段見慣れない顔だから違和感だらけですぐに顔を洗いたくなった。
勿論愛麗が許してくれるわけなくて、顔を隠すように俯く。
「あ、いた」
私の一歩前を歩いていた愛麗が声を上げる。
「!」
愛麗の視線の先を追いかけると、携帯を見ながら昨日の優さんが迎えに来てくれた場所に立っている疾風さんの姿があった。
遠目から見てもすらりと身長も高く、まるでモデルみたいだ。
あそこだけなんだか雰囲気が違う気もする。
通る女子学生のグループが、何度も振り返って見つめている。
「かっこいいわねー。優には負けるけど」
何さらりとノロケ入れてるわけ。
更にため息をつきたい心境に狩られながら、私達は疾風さんに近づく。
すると、疾風さんが顔をあげた。
「…………」
「…………」
私の姿を捉えた刹那、目を見開く疾風さん。
すみません。こんなになって。
やっぱり可笑しいんじゃないかと思う。
逃げようかな。
そんなことを思っていると、疾風さんはパチンと携帯を閉じるなり大股で歩いてくる。