狂愛彼氏
愛麗がそんな気持ちでいたなんて全然知らなかった。
いままで私は、愛麗にぬくぬくと木綿でくるむように守られてきたんだ。
私の中に、申し訳なさと今の今まで愛麗無事だったことに安堵する気持ちとがグルグル渦巻く。
「馬鹿じゃないわよ」
「馬鹿」
とりあえず、今私の口からはこの言葉しか出てこない。
「……………まぁいいわ」
何か言いたげだったが、愛麗は化粧することに専念する方をとったみたいだ。
つけまつげやら、チークやら鏡で見ていないからわからないが、恐ろしい。
「今日だけ特別だから」
「?」
「本当の遥を出して更に引き出して、疾風さんおとしちゃえ」
「………は?」
「疾風さん、どんな反応するかしら?」
「は、ちょ、まさか放課後のため、」
「勿論、そして明日から何時もの地味な遥にもどること」
アイロンを暖め始めた愛麗は、私の顔を見ながら満足そうに目を細めた。