王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「そうですか」

それだけ返事をして、まだ闘っているふたりに視線を戻す。

「うわぁ、すっごいわかりやすく無視しようとなさいますね! もしかして私は嫌われましたか? えぇ~? そうなら、すっごくショックなんですけど」

……うるさいな、と、感じたのは確かなんだ。だいたい胡散臭そうだし。

「このしゃべりの方は、レオノラ嬢はお嫌いのようですね」

急に自嘲するような笑みを浮かべ、トーンダウンしたルドさんをチラ見する。

「あそこまで軽薄を前面に出されますと、ご遠慮した方がいいように思えます」

「そうですよね。私もそう思うわけですが、何故か夜会に出席されるご婦人にはウケます」

「火遊びされたい方でしたら、そういうアプローチもありでしょう。私は、外に愛人を持ちたがる方の心理はわかりませんが」

呟きながら、未だに父上と打ち合っているウォル殿下を眺める。

意外。父上と互角に渡り合ってるよ。

確かにウォル殿下は近衛兵団の団長だけど、歴代の王族のいわゆる名誉職的な意味合いも強いから、正直、お飾りなのかと思っていた。

鋭い突きを見せる父上に対して、ウォル殿下はヒラリとかわし、また模擬刀で受け流し……。

そう思った瞬間、父上の目が鋭くなった。

あ、これは仕掛けるな。

そう思ったのは一瞬で、次にはカランカランと、模擬刀をが床に落ちた乾いた音が場内に響く。
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