私の恋した誘拐犯【完】
「…冗談だよ」



ふっと笑って、私から目を逸らした洋くんはどこか寂しげに。



「肉じゃが食べよっか」



何事もなかったかのようなその態度は、もう理解できそうにない。



私は洋くんへの想いを忘れようとしてるのに



なんで洋くんは、そんな努力を何度も0にさせてくるの?



分かっててやってるのかと思うほど、洋くんへの想いを断ち切ろうと決心したときにそれはやってくる。



洋くんに顔を近づけられた時、あのまま事故でも触れてしまえばいいのにと思った。



最低だ



私を想ってくれる人がいるくせに、そんなことを考えた。
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