あなただけの騎士
なら桃華に迎えに来てもらえばいいんじゃないか…?

いや、こんな夜に桃華を外に出してはいけない。


「…桃華のところに連れていけばいいのか?」


『いや!桃華ちゃんに軽蔑されたらもう、あたしっ…!』


…桃華は軽蔑なんかしないけどなぁ…。
俺は早く帰りたいがために少し言い方がきつくなってしまった。


「…だる。自分の家に帰るか友達のところいくか、決めろよ」


『いやですよぉっ…!なんでぇっ、みんな、そんなっ…グスッ』

うわっ…なんて女ってすぐ泣くんだよ…

俺はしゃがみ込んだ女と同じよいにしゃがむ。


「じゃあここにいてまた襲われてれば?」

『いやああっ!』

…いい加減近所迷惑なんだけど。

俺は立ち上がり、女を見下すような形になった。


「じゃあ何が望みなんだよ」
『騎士団といっしょにいたいんです!』
「無理」


『え?』


「無理なものは無理」


俺はその場から立ち去ろうとした。


『待てよ、キング。一応キングなんだから女の子のこと、最後までしっかりしろよ』


「はぁ…。騎士団にいて何したいんだよ」


俺は女のところまで戻り、また会話を始めた。


『だって…だって、あたし、もう助けてくれた、あなた達しか、信用出来ないっ、』


…桃華は?桃華は信用出来ねぇのか?
あ゛?


『キング、怒るな』


蘭に声をかけられ、正気に戻る。

『とりあえず、アジトにだけ連れて言ってあげたら〜?』


俺たち騎士団はアジトとホームの二つの溜まり場がある。

アジトは敵が来てもいいように、場所がバレてもいいようになっている。
アジトがバレても問題は無い。
アジトはホームを隠すダミーみたいなものだ


一方ホームは絶対にバレてはいけない。
ホームは俺たちの本当の溜まり場、というのもあるが、居場所がない奴らの家、みたいなものなんだ。


「わかった。アジトに連れていく」


『本当ですかっ?』


…?俺はこの時、安藤杏美にふと違和感を感じた。


話し方?いや、違う。
声?
顔?

…瞳?


俺は生憎普通の人間(でもない)だからどんなことを考えてるか、なんて読み取れないが、表情に少し違和感がある。


とりあえず、アジトにだけ連れていってやるか。
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