その男、カドクラ ケンイチ
オオシマも帰宅し、
職員室に戻ったカドクラは今日の面談のメモを整理し始める。
「あの…カドクラ先生。」
話し掛けてきたのは保健室の先生 モモイだった。
「はい。」
「ちょっとだけいいですか?」
モモイに連れられカドクラは保健室に向かう。
「どうしました?別に体の具合は悪くないですよ。」
「ちょっとまだ誰にも言ってないんですけど…」
さきほどからモモイの顔つきは少し暗い。
「6組のオオシマさんが。」
「オオシマですか?」
「昨日体調が悪いって保健室に来て。
熱はなかったので1時間横になってまた戻ったんですけど。
その時に…」
自信なさそうにモモイが口にする。
「腕に煙草を押しつけられたような痕が見えて…」
「本当ですか!?」
「チラッとしか見えなかったんですけど。
気になって…。」
「まさか・・」
さきほど『悩みはない』と言ったオオシマの笑顔がカドクラの頭の中を巡る。
「モモイ先生、ありがとうございます。」
カドクラは急いで職員室へと戻る。
「エンドー先生。」
「なんぜよ。」
「今日仕事終わったら一緒に帰りませんか?」
「カドクラ、お前まさかそっちの気があるんじゃねぇだろうな。」
「ないです。」
即答してカドクラは再び仕事に戻る。