【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
次に目を覚ました時には13時になっていた。
頭も少しスッキリしている。
これなら帰れそう…
「センセー…?」
もう帰れそうです、と言おうとしてセンセーを探す。
そして、センセーの白衣の首元を見て心臓が止まりそうになる。
紅い、リップがついてる。
…そうだよね。センセーに彼女がいないなんて、勘違いしてた。
ちょっと意地悪に見えて、本当はすごく優しいセンセーに彼女がいないわけない。
そんなの想像すればすぐに出来るようなことなのに…
認めたくなかったことを一気に思い知らされて、センセーと呼ぶ声が少し詰まる。
「…っ」
それでも気付いてくれるセンセーはやっぱりずるい。
「どうした?
大分良くなったか?」
「あっ、うん…そう。
帰れそうかなって…」
いつもなら普通にできる笑顔がわからない。
あれ、何でこんなにひきつるの?
「一人で帰れるか?
いや、送ってった方が良さそうだな…」
今、センセーと2人になりたくない。
まだ心の整理がつかない。
彼女さんのこと、聞きたくても聞けなくて…こんなもやもやした気持ちのままセンセーと一緒にいられない。
「だっ大丈夫。1人で帰れるから」
「…そうか。
じゃあちょっと待ってな。荷物とか持ってきてやるから」
「ありがとう」
ほら、また好きだと思っちゃう。
何でこんなにときめいちゃうの…