ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
魔の山とシルベスターの境にて
アマリアとイソルガは国境にて臨戦態勢に入っていた。

ナジェントはもう陥落しており、そこからの国境にて一触即発の状態だった。

どちらが先に仕掛けるかの睨み合いである。


「フッ、この後に及んで様子見とは。ドミレスタの軍勢は意外と小物ね?」

冷酷な目線で戦場を見つめながら呟かれたアマリアの声には、嘲りさえ見える。

「それともこちらを侮って、小物しか寄越さなかったか?」

答えるイソルガも、声に嘲笑の色を隠せない。


「我がシルベスター、甘く見られたものね……。我々に歯向かうとどうなるか。分からないお子様皇帝には、その身をもって思い知らせてやらねばならないわね……」


冷笑と共にレイピアを構えたアマリアに

「アマリア、君が出るまでもない。俺が出れば十分だろ?大将は控えてなきゃ、な?」


そう言うなり、凄まじい速さで大太刀を握ってイソルガが敵本陣に突っ込んでいくのを見た部下達もそれに続く。


「副団長!突っ走らないでくださいよ!!」

その声とともに一個小隊が飛んでいった。
各々の武器を携えて。


「さて、では少し私は様子を見させてもらおうかしら?」

短剣を構えることなく、さらに目線を向けることもなく後ろに放ったアマンダに

「なぜ?!!」

刺客の一言に、アマリアは冷ややかに微笑んで悠然と答える。

「愚かな質問だ事。私はシルベスター魔法騎士団団長、アマリア・シルベスターよ。我が身に死角等ないわ」


アマリアに差し向けられた2桁近い刺客はものの数秒で倒された。
しかも魔法騎士特有の、武器に魔法を掛けて飛び道具となった短剣1本で事が終了したのである。


彼女の強さもまた人外レベルであるがゆえに、国の守りとしては完璧なのだ。
しかし、暴走すると厄介であるので、兄王の胃痛の種なのである。
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