ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい

「久しぶりだな、イソルガ殿。風圧でほぼ散ったがこの後どうする?」


久しぶりに会ったラグーンの竜騎士団長はニコリともせずに、あっさりとこともなげに告げる。
敵方は、きっと初めて目にするであろう竜の巨体に後退していく。

「久しぶりだな、ガルドウィン殿。セイダー殿も感謝する」

そうイソルガが声を掛ければ、黒竜セイダーはグルルと喉を鳴らした。
地を這うような音に敵方は、更に後退していく。

しかし、前回の魔獣討伐や、騎士団同士で交流のあるシルベスターの魔法騎士団の面々はセイダーの音にも驚かない。
しかも、今のグルルは意味合い的には「礼には及ばんよ」的な大変機嫌の良いお返事なのである。

竜の生態をなにも知らないであろう帝国側には巨体と竜の本来の顔つきも相まって恐怖しかないであろうが……

魔法騎士団と竜騎士団の組み合わせは、言うなればこの大陸にて怖いもの無しの最強の取り合わせだ。
両国で育った者ならば、ある程度の年齢の子どもですらバカが喧嘩売ったとしか思えないレベルなのだ。

後退していく敵を尻目に、上空には続々と竜騎士が集結しつつあった。
一小隊が五人とはいえ、竜に乗った騎士が十五人。

つまり巨体な竜が十五匹である。


普通に考えて勝てない。
人間としてはその大きな生き物には、自然と恐怖しか浮かばない……。


敵国の兵は瞬く間に国境から姿を消し、後退して行った。
誠に、あっけない幕切れである。
竜騎士が姿を見せるだけで、こんなにあっけなく国境付近は落ち着いた。
竜の見た目のなせる業である。

まぁ、彼らは無謀ではなかったことだけは分かる。
それが良かったのは間違いない。
竜騎士と戦闘になれば、この地が変形することは避けられないのだから……。


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