溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
ブンブン首を振り、『違う』と訴えたのに、彼はまったく意に介する様子もない。


「いいじゃん。本当になっちゃえば」

「そんなこと、簡単に決めないでください」


そう言ってから、ハッとした。
千代子さんとの婚約は、もっともっと簡単に——本人の意思は関係なく、決められたんだった。


「だから言っただろ? 澪とならいいって」

「結婚って、ずっと一緒にいる契約なんですよ? じっくり愛をはぐくんで、この人とならそうなってもいいと思ったときにするものです」


政略結婚を押し付けられた彼に、こんなことを言うのも……と思ったけれど、きちんと言っておかなきゃ。


「それじゃあ、愛をはぐくもう」

「は……」


思いがけない返答に、戸惑いを隠せない。


「俺、澪とならできる気がする」

「『できる気がする』とかじゃなくて、好き、なら付き合うんです!」


私が反論すると、彼は突然ガバッと起き上がり、私の顔の横に両手をついて見下ろしてくる。
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