溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「行かせない。澪はどこにも行かせない」

「大成さん……」


彼の私への想いが、バシバシ伝わってくる。

それならどうして、なにもかも教えてくれないの?


「俺が迎えに行くまで、頼むからマンションにいてくれ」


大成さんがあまりに悲痛な声でつぶやくので、私はうなずいた。


彼のスマホは鳴っては切れをもう数回繰り返している。


「大成さん、行ってください」


おそらく彼が必要なんだ。


「でも……」

「私、本当は不安です。今でも泣いてしまいそうです。だけど、大成さんのこと、信じてます」


私は今の気持ちを正直に話した。

彼が待っていてもいいというなら、私はいつまでも待っている。
だって、大成さんと離れるなんて、今の私にはできないもの。


「澪、ありがとう」


大成さんは最後に私を強く抱きしめてから、ボイラー室を出ていった。
< 270 / 363 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop