溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「澪はバカなんかじゃない。お父さんとお母さんは、ちゃんとわかってるさ」

「そう、でしょうか……」


そうだといいな。
私の問いかけに大きくうなずいた彼は、唐突に頭を下げる。


「澪……本当にすまない」


なにを謝っているの?

おそらく彼は……父の自殺を私の耳に入れたくなくて千代子さんの言う通りに、私との距離をとったのだろう。
感謝の言葉を言いたいくらいなのに、ショックが大きくて首を振ることしかできない。


「おいで」


彼は人があふれるロビー近くで、ためらうことなく私を抱きしめる。


「ごめんな。お前を守ると約束したのに」


大成さんは声を震わせる。
だけど、彼がなにもしなかったわけがない。


「父のことを口外しないように、千代子さんと交渉してくれていたんでしょ?」

「……うん」


しばらく私と接触しなかったのもそうだし、彼女が約束を破り私に近づいてからも、話をしてくれていたんじゃないだろうか。


「家に戻ろう。ゆっくり話したい」


私もそうしたい。
私たちは家に帰ることにした。
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