溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
彼に促されエレベーターを降りると、玄関らしきドアがふたつあるだけだ。


「あれ、ふた部屋?」

「うん、このフロアは半分俺ん家」

「え……」


今、なんて言いました?
私のマンションなら、二十くらい玄関があってもおかしくない広さなのに。

口をあんぐり開けたまま、彼に引っ張られ、部屋に入った。

すると八畳一間の1DKの私の部屋とは違い、驚くほど広い玄関の横には、シューズクロークまである。
そこには革靴からスニーカーまで、数えられないほどの数の靴が並んでいた。


「な、なに、これ……」

「なにって、靴箱?」

「普通、このくらいですよね」


両手で、十足くらい入りそうな大きさを示してみる。


「それじゃ入らないだろ」

「十分入りますけど……」

「ま、そんなこといいから上がって」


彼は平然とした顔をして、これまた広い廊下を進んでいく。


「ここがトイレだから。で、こっちが風呂」

「は、はい」
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