溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
彼は実に適当に部屋紹介をしながら奥へと進む。
私も慌てて続くと、ドアを開けた彼が振り向き、私を手招きする。


「電気をつける前に」


そう言った彼は、私の手を引き部屋の奥へと進む。
彼が大きな窓を開けると、フワッと風が吹いてきて髪を揺らした。


「なに、これ……」


広すぎるバルコニーの先に広がる夜景。
まるで一面に敷き詰められたかのような光の畑に、息を呑む。

さっき下で見た光景よりはるかに迫力があるのは、より遠くまで見えるからだろう。


「あそこがアルカンシエル。で、あっちがLa mer TOKYO」


彼は説明してくれるが、暗くてなんの建物かまではわからない。


「その向こうは海。昼は海もよく見えるぞ」


なんて贅沢な空間なの?
あまりに感動して言葉を失くした私は、そのまま美しい景色に見惚れていた。


「澪、寒くない?」


彼は、ジャケットを私にかけてくれる。
ここは高いせいか少し風が強い。ホルターネックのドレスではたしかに少し肌寒い。
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