溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
百花が大きな声で言うので、私は慌てて彼女の口を押さえる。


「そ、そうだけど、昨日の彼のことは、内緒にしておいて」

「なんで? 彼氏なんでしょ? あんなイケメンなんだから自慢したらいいじゃん」


わけありなのよ!
なんと説明したらいいのかわからない。
けれど大成さんとは、彼の周りが落ち着くまでの期間限定の婚約者なわけだし、あまり大事にはしたくない。

あれ、期間限定っていつまでなんだろう。


「えっと、とにかくお願い」


顔の前で手を合わせて懇願する。


「なんだ、照れくさいの?」

「そ、んな感じかな。あはは」


そういうことにすることにした。


「わかったわよ。けど、私には隠しちゃダメよ。あっ、時間ない。事情聴取はあとでね」


百花は妙に機嫌がよく鼻歌を歌いながら、更衣室を出ていった。
多分……私に彼氏ができたことを喜んでくれてるんだ。


「ごめんね、百花」


偽の彼なのに。
罪悪感でいっぱいになりつつ、私も慌てて着替え始めた。
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