溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
とはいえ、仕事が始まると、大成さんのことを考えている暇はない。


「シーツ掛けておいて」


一緒に組んでいるバイトの大学生の女の子に声をかけ、私はバスルームの掃除を始めた。

浴槽とトイレの掃除を終えベッドルームに戻ったものの、ふたつあるベッドのうちのひとつのベッドメイキングが終わっていない。


「急いで、時間がないわよ」


そろそろ次の部屋に行かないと間に合わない。


「はー、この仕事、給料のわりに重労働すぎません? このシーツだってこんなに苦労してシワを伸ばしても、お客さんは気づきもしないでしょ? 西條さん、よく続いてますね」


彼女の言う通り、ハウスキーパーは体力勝負だし、完全に裏方だ。
しかし、私たちがいなければ、アルカンシエルは成り立たない。


「お客さまは、きれいな部屋が用意されていて当たり前だもの。それにお金を払ってくださってる。それに、上の人たちは、ちゃんと私たちの仕事を評価してくれているのよ」
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