約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
今市宿?
私たちは負傷兵を連れて、そこに行けばいいんだね。
有難う。
舞ちゃん……。
「敬里、行く先は決まったわよ。
皆、今市宿に向かうわ。
動ける人たちはお互い助け合いながら、移動してちょうだい。
敬里、私がその人の支えになるから、敬里は敵の様子を探りながら進行先を確保して」
私が告げると、敬里は支えていた隊士の腕を私の肩へと移動させて、
ゆっくりと前方へと走っていく。
「加賀隊士。自分も敬里さんと進行先の偵察に加わります」
「有難う。二人とも気を付けて。無理しないで」
今市へ向かう道すがら。
メインの道は新政府軍が進軍してくるので通れるはずもなく、
私たちは山の中の獣道のような場所を中心に歩いていく。
「皆、足元気を付けて。
足元がかなりぬかるんでるから、滑落しないでね」
負傷兵たちを酷使しているのはわかってる。
表のメイン道を歩ければ、今頃は今市に到着してるかもしれない。
だけど、それは新政府軍に見つかってしまうリスクが高くなる。
「舞、次の道は、二股になってるぞ。
どっちに行くんだ?」
敬里は時折戻ってきては、先の道筋を確認していく。
その瞬間、葉がカサカサと揺れる音が聞こえる。
「おいっ、誰かいるのか?」
突然、見知らぬ声が山の中に響いて、
銃声が轟く。
息をひそめるように身を縮めやり過ごす時間。
何度目かの発砲の後、鳥がバサバサと音を立てて空へ飛び立っていく音が聞こえた。
「なんだ。鳥だったのか。
おいっ、こっちに幕府軍の残党はいないようだ。
お前たち、向こうへ行くぞ」
そんな声が聞こえた後、数人の足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
「やばっ。
お前ら、大丈夫か?」
敬里の声に、それぞれの隊士たちの緊張の時間が解放されて、
お互いの無事を確認しあう。