約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)


「山波君だったかな。
 今日のところは、手伝いはもう必要ない。

 土方さんのところへ戻りなさい」

「はいっ」

「あのっ……、土方さんですが、銃創の影響からか、
熱が出てしまっていて、来る前に、解熱と気血を補う薬を煎じました」

「君は薬にも明るいのですか?」

「私が知っていることはまだ少なく、私もまだまだ勉強中です。
 ですが私の大切な人が医学の心得を持つ人でした」

「君が時折、触れている簪を送った方ですか?」



先生にそう言われて、私は頷きながら、またその簪に手を伸ばす。


「鳥羽伏見の戦いの折、彼は私を守って銃に倒れました」

「そうでしたか。
 それは辛い思いをしましたね」

「だから今は、少しでも私が役立てることで、この戦を早く終わらせたいと思っています」




そう……私が元の世界に戻るまで。




「ならぱ、私の手持ちの漢方を少しわけましょう。
 ついでに銃創の際に必要な薬も教えましょう」

「有難うございます」




その後、その部屋で私は、先生に新たな漢方薬の名前と効能を教えてもらった。

それらを書き留めて、自分の知識へと繋げていく。
気が付けば夜が更に深まる時間となっていた。



「おやっ、遅くなってしまいましたね。
この薬は君に預けておきましょう。

 必要なときにしかるべき使い方を。

 そしてこちらは、土方さんへ。
 共に煎じた化膿止です。

 目が覚めたら、飲ませておあげなさい」


「有難うございました」



先生の元を離れると、私はすぐに土方さんが休む部屋へと向かった。


部屋に戻ると、土方さんはもう起きてしまったのか、
壁にもたれるように体を起こしていた。



「山波かっ。悪かったな、寝ちまったみたいで」

「いいえ。
 熱は下がりましたか?」

「今のところな。
 足の傷から来てる熱なら、今下がっているのは一時的なものだろう。

 地竜を煎じたか?」


図星を言い当てられて、私はゆっくりと頷いた。


「山波、戻ってきたばかりで悪いが、隊士の中島を見つけて、
 日光警備についている、土方勇太郎を連れてきてもらえねぇか?」


突然、土方さんはそう告げた。



「土方勇太郎……さん?
 それは土方さんのお身内のかたでしょうか?」

「違うぜ。
 アイツは、天然理心流で出逢った友だ。

 もう少し体を休める。
 勇太郎が来たら、起こしてくれ」


そう言って、土方さんは再び眠りについた。

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