約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

「花桜、新政府の銃と、徳川の銃。どっちが性能いいと思う?」

「えっ?使ってる銃って違うの?」


驚いたように花桜は私を見つめる。


「エンフィールド・ミニエー・シャスポー。
 他はなんだったかな……、戊辰戦争って何種類もの銃が使われてるの。

 最新兵器は薩摩だけが持ってたって思われがちかも知れないけど、
 こっちにもあったの。向こうにはなくて、こっちにあった銃はシャスポーって言うフランス製の銃。

 この銃は弾の装填時間が、後ろからだから早いの。
 エンフィールド銃が一回装填してる間に、四回も装填できちゃう優れものだって知ってた?

 向こうに居た時に、テレビでみた受け売りだけどね。

 確かにあっちが投入してきた銃は、飛距離も威力も強いよ。
 だから……統制さえ、命令系統さえしっかりして、上が無能じゃなければチャンスはあった。

 何度も何度もチャンスはあるのに、なんであのバカ幕府はチャンスロスばかり平気でするんだろうね」



今、ここでチャンスをものにしたら、過去とは違った時代になってたかも知れない。


私はそんな悔しさに、憤りに、どうやって感情をぶつけていいかわからなくて、
傍にあった土壁に、拳を打ち付けた。


殴った衝撃を受けて、少し土壁が零れ落ちる。



「あぁ、可愛い二人が、そんなとこでなんちゅう会話しとるんや?
 物騒な会話なら、もっと小声でやりや。

 ここには、徳川の御威光を信じ切った魍魎がまだまだ居るんやで」


そんな言い方をしながら、突然現れたのは山崎さん。


「丞、隊士たちの手当ては?」

「あぁ、一通りは終わったで。
 んで様子見に来たら、花桜ちゃんたちの物騒な会話が聞こえてきたちゅうわけや」

「物騒な会話って、ただ私は思ったことを花桜に聞いてもらってただけ」

「まぁ、舞ちゃんや花桜ちゃんたちにしてみれば、軽い気持ちかもしれんけど、
 それだけじゃ終わらんこともあるっちゅうわけや。

 確かに話を聞くだけやったら、共感できる部分もある。
 けど、わいらは、今、精一杯出来ることを己自身の誠の中でやりきるだけや。

 どんだけ上がグタグタでどうしようもなくても、この誠だけは誰も変わらんのちゃうか?」


そう言って山崎さんは笑いかけた。

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