約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「舞……」
「花桜、泣きたいときはいっぱい泣いたらいい。
だけど……これ以上、花桜自身を責めないで。
山崎さんが自分のすべてをかけて、助けた大切な存在なんだよ。
だからその思いを無駄にすることなく、いっぱい受け止めて、生き抜いて。
生きて生きて生き抜いて、ちゃんと何時か、現代に帰って」
現代に帰って……。
そうやって続けた舞の言葉に、違和感を感じながら私はゆっくりと頷いた。
「山波、加賀、入るよ」
沖田さんモードの口調で声をかけた敬里は、
何かを手にして傍へと近づいてくる。
「寒くないか?
そんなに多くはないけど、あたたかい白湯を貰って来た」
そう言って私たちの前に差し出す。
順番に手を伸ばして、湯飲みを持つと一口、また一口と口に含んでは飲み込んでいく。
「こんな時にカイロでもあったら暖かいのにな」
そう言って呟く敬里の言葉に、私たち二人も頷いた。
「順調に船が進めば、明日には陸にあがれるらしいぞ。
さっき、榎本さんがそう言ってたのを聞いた」
「そっかー。
これ以上、天気が荒れないのを祈るよ」
「だよなぁー。
さて……っと。
僕はやるべきことをするために、近藤さんたちの元に戻ります。
山波と加賀の二人も落ち着き次第、
負傷している隊士たちの介助をお願いしますよ」
あっという間に、沖田さんが乗り移ったかのような口調に変わった敬里は、
湯飲みを回収して、外へと出て行った。
「って言うか、あの変わり身の早さ、やばいよね。
思わず吹き出しそうになっちゃったよ」
「私も同感」
舞の言葉に激しく頷くとずっと手に握りしめていた簪を、
再び髪の毛へとゆっくり差し込んだ。
丞……、ちゃんとこの場所で私の行く末を見守ってて。
道に迷う時もあるかも知れないけどちゃんと私は私らしく、
貴方が繋いでくれた命を守っていきたいって思えたから……。
だから……いつも傍で、私を見守ってて。