約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

「敬里」

「二人も来たんだ」

「そりゃ、ついていくわよ。
 私は山南さんの代わりに、ちゃんと未来を見届けるって決めてんるだから」

「私も行くわよ。
 ちゃんと私の中の約束を叶えなくちゃいけないもの」

「んで敬里、あんたは大丈夫なの?」

「大丈夫って何がだよ。
 その言葉、花桜に返すぜ」

「私は大丈夫よ。山南さんのことも丞のことも乗り越えて、
 ちゃんと歩くって決めたんだから」

「あぁ、そうかよ。
 好きで厄介ごとに顔突っ込んでんじゃねぇよ。ったく。
 斎藤さんに用意してもらった長屋で、普通に平穏に暮らすことだって出来るんだぞ」

そう敬里は昨日までの生活を声に出す。


「でもそれは偽りだもの」

「偽り?」

「私たちに、まだ出来ることがあるなら、ちゃんとそれを私も見届けたい。
 私にも私の中の誠が出来たもの。
 皆と一緒に居て」


私がそう言い切ると、敬里は溜息を盛大に吐き出した。
その途端、ゴホゴホと咳をする。
 
「敬里?あんた……」

「風邪だよ。風邪。熱は出てないからさ。
 冬はこれだから嫌なんだよ。

 さて、二人とも少し俺について来てよ」


そう言って、口調が沖田さん口調へと変化した敬里は
私たちの前を先導していく。


敬里に連れられて向かったのは、見知らぬ屋敷の中。
その屋敷の一室へと先導したアイツは、ゆっくりとふすまを開いた。

その部屋の中には、二着の女性用の洋服。


「これ、お前たちの。
 近藤さんと土方さんから。

 俺はお前らに、これを渡すかどうかの判断を任されたんだ。
 ずっと渡さないでいようって思ってたんだけどな。

 花桜にも舞にも危険なことなんてして欲しくねぇからさ。
 けど、俺が渡しても渡さなくても、お前らついてきそうだし。

 だったらその覚悟を認めたってことにしようかなって思ってさ。
 これに着替えて、他の隊士たちの前に顔出せよ。

 先に行ってるから」


敬里はそう言うと、その場を後にする。
残された私たちは、着物を脱いで誂えられた洋服へと袖を通した。

お互いの愛刀を持つ。


「舞、覚悟はいい?」
「花桜こそ」


お互い顔を見合わせて、アイコンタクトを送りあうと同時に頷いて、
その部屋から隊士たちが集まっている広場へと顔を出した。

ここに来るまでに、甲陽鎮撫は本来、彰義隊に依頼されるはずだったが拒絶されて、
新選組へと依頼されたなんて噂も耳にした。


新規隊士を迎えた隊員200名で、
大砲2門・ミニエー銃500挺を与えられてその任務は始まった。 

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