約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

総司が読んでいる本を覗き込むと、
そこには新選組の歴史が綴られているみたいだった。

「山波さん……。やっぱり僕も、お祖父さんとはなかなか呼びづらいですね。
 あの人が、山南さんの血をって思うと、僕も感慨深くなりました。

 この本は、家にあったものを持ってきてくださったんです。
 今、現代で伝わっている『新選組』の歴史が気になるなら読みなさいっと。

 今はまだ、芹沢さんがいる頃の話なんですけどね。
 面白いですねー。月の時代では、こんな風に伝わっているんですね」

そう言いながら、総司は、本の中に出てくる懐かしい名前を、指先で辿っているようだった。

「瑠花、近藤さんたちは?」

ふいに呟く総司の声。

「苦戦しているみたいです。
 さっきは、甲州勝沼の戦いの最中でした」

「……甲州……勝沼の戦い?
 僕が知らない戦が、どんどんあるんですね。
 僕が動ければ……少しは役に立てていたのでしょうか?」

そういった総司は、次の瞬間、自らの思いを否定するように言葉をつづけた。

「あぁ……確か、この世界の歴史に伝わる僕は、その戦いにも参加できていなかったんですよね。
 だったら……夢でもいい。

 今の僕の身におこっていることは、望んでもない現実なのかもしれませんね」


そう言って、総司はベッドの上で静かに瞳を閉じた。
その総司は、何故か遥か遠くに思いを馳せているみたいで……。

総司がどこか遠くへ消えてしまいそうな不安に駆られて、
思わず「総司?」っと声をかける。

すると少し驚いたような表情を見せた後、
総司は私に笑いかけた。


「目を閉じていると僕は、向こうの世界を感じることが出来るんですよ。
 砲弾の近づいてくる感覚も、必死に逃げている感覚も……。

 だけど、その全ては夢なのだと思っていました。
 でも瑠花の話を聞いて、僕もこの場所で戦いに関われるのかもしれないと……」



総司はそう言うと、再び目を閉じて、
遠い仲間たちの世界へと想いを馳せているみたいだった。


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