私の上司はご近所さん

ベッドに寝転がりながらぼんやりと昨日のことを考えていると「百花! 朝ご飯よ!」という母親の声が下から聞こえてきた。

食欲なんてない。今日はこのままベッドの中でゴロゴロしていたい。

母親に抵抗するように頭の上からタオルケットをかぶった。けれど残念ながら、そんなことくらいでは隣の家まで聞こえそうな母親の大声をシャットアウトすることはできない。

「百花っ!」

主婦の朝は忙しい。イライラしていそうな母親をこれ以上怒らせないために「今行く」と声をあげると、ベッドから体を起こした。

階段を下りてキッチンに向かうと、テーブルにはすでに家族が揃って朝ご飯を食べていた。

「百花、早く食べちゃって」

母親に急かされて席に着いたもののまだ頭が鈍く痛んで、目の前に並んだ食事を見ても食欲がわかなかった。

「食べたくない」

ふてくされながら駄々っ子のようにつぶやく。

「そんなんじゃ、今日一日もたないわよ」

向かいの席で、味噌汁に口をつけた母親が眉を寄せるのが見えた。

今日は店頭で焼きそばを売る。冷房も効いてない店先での接客は、体力勝負と言っても過言ではない。

「……ヨーグルトあったよね?」

「冷蔵庫に入ってる」

「わかった」

イスから立ち上がると冷蔵庫に向かい、ドアを開ける。イチゴの果肉が入ったヨーグルトを取り出すとスプーンを持ち、テーブルに戻った。

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