私の上司はご近所さん

なんの脈絡もなく飛び出した合コン話に困惑してしまう。

「うん。先輩から誘われたんだけど、人数が足りないらしくてさ。今回は男性陣の条件がすっごくいいの。医者に弁護士に商社マンだって」

満面の笑みを浮かべながら熱く語る結衣からは、今回の合コンにかける気合いが十分に伝わってきた。

けれど私は夏ショコラの発売とイベントを控えて合コン気分にはなれないし、今は彼氏がほしいと思っていない。

「結衣、ゴメ……」

合コンに参加するのを断ろうと思った矢先、オフィス全体の明かりがパチンと点いた。「お疲れさま」という挨拶とともに、部長が姿を現す。

「部長!」

すでに退社したと思っていた部長が突然姿を現したものだから、慌てふためいてしまった。けれど結衣は私とは違い、焦ることなくイスから立ち上がる。

「お疲れさまです。じゃあ、百花。私はこれで。いい返事待っているからね」

「あ、うん」

結衣は「お先に失礼します」と部長に挨拶すると、広報部から出て行った。

残業中にもかかわらず、違う部署の結衣とムダ話に花を咲かせていたことが後ろめたい。部長とふたりきりになったオフィスでパソコンに向き直ると、そそくさと業務を再開させた。

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