もしも、運命の赤い糸がみえたなら

「失礼します」


いつも通り、クラスと名前を名乗り、ノックする。


だるそうな声で


「どうぞ」


と聞こえる。



「はい、これ。9月1日までに提出してくださいね」


入ってすぐ、何も余計なことを言わせないように山脇先生がつきだしたもの




それは



「これ、なんですか?」


「夏休みの特別課題。」


「先生があたしのために作ってくれたんですか?」


「そうですが・・・?」


「うれしい。先生はこれを作ってるとき、あたしのことを考えてくれてたんですよね?」


「そうですが、あなたの思っているようなことは別に考えてませんよ?」


「それでもうれしいんです。先生があたしのことを考えてくれたってだけで」


「石川さん、あなたはとてもポジティブですね。」


「へへ。先生ほめてくれてうれしい。大好き。」


「用は済みました。早く帰って解いてください。提出期限は必ず守ってくださいね。」


「はい。では、さよなら。先生、大好きです。」



あたしは、教室に戻り、山脇先生の特別課題を開いた。


最初の数ページは基本用語の一問一答。


後半は基本用語を使って答える問題と応用問題。


これは、絶対、家に帰ってからはやらないやつ。


あたしは、放課後の教室で、日本史の教科書を取り出し、問題を解き始めた。

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