もしも、運命の赤い糸がみえたなら


「あれ?栞菜ちゃん、まだいたの?」


聞き覚えのある声がすると思ったら。


汚れたユニフォーム姿の森くんだった。



「森くん、試合、お疲れ様。今日、ヒット打ったんでしょ?すごいね」


あたしは幸華ちゃんから聞いた情報を言う。


「え?なんで知ってるの?」


「幸華ちゃんに聞いたの。すごいね。試合に出て、活躍して」


「いやいや、たまたま。代打で出させてもらって」


「それで打てるからすごいよ。いっぱい練習したんでしょう?」


「そんなのみんな一緒だって。そういえば、栞菜ちゃんは何してたの?」


「あたしは、山脇先生からの特別課題を少し」



あたしはプリント集を隠し、森くんから視線を外した。


「俺でよかったら、教えようか?」


「ううん。山脇先生が補習の時に教えてくれるみたいだから大丈夫。」


森くんの申し出を断ってしまった。


「そっか。わかんないのあったら聞いて。教えられるのは教えるし。」




森くんの笑顔はいつだって優しい。


「そろそろ帰ろか。外、だいぶ暗いよ。」


その言葉に窓の外を見ると、だいぶ暗くなっていた。


あたしはやっぱり頷いて、森くんの後姿を追いかけた。




< 65 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop