PMに恋したら

「それに今年は警備を増やすことになってるから、俺も絶対に休めないしね」

「そうだね。通り魔がいるんじゃね……」

あれだけ世間を騒がせた通り魔はまだ捕まっていない。そのせいで今年の古明祭りは中止にしようとの意見もあったようだけれど、歴史ある祭りを中止にはしたくないという地元住民の意見の方が圧倒的に多かった。周辺の住民や企業で何度も話し合いをした結果、今年も通常通り開催しようということになったそうだ。シバケンを始めとした警察官はいつも以上に警備が大変だ。余計な話題がついて訪れる人が増えることも予想されていた。

「実弥はお祭り来るの?」

「どうしよう……毎年レストラン事業部の手伝いで出勤するけど、今年はいいって言われてるし、お父さんがこんなんだから」

「そうだよね。人が多いし大丈夫だと思うけど、もし出勤するなら絶対に一人にならないように気をつけて」

「うん。分かった」

一人になるなと言うシバケンがおかしい。人が多すぎて疲れてしまうお祭りでは、一人になる方が難しいのに。

「また連絡する。実弥も遠慮なく何でも言って」

「うん。ありがとう」

電話を切るとシバケンと話す前よりも心が軽くなった。こんなことで楽になるなんて、私はなんて単純なんだろう。それだけシバケンの存在が大きいということかもしれない。やっぱり私は彼がいないとだめみたいだ。

お風呂に入り、眠気がくる頃には父が目を覚ましたと母から連絡があった。意識ははっきりしていて脳に異常はないらしい。まずは一安心だ。



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