PMに恋したら
◇◇◇◇◇



出勤しなくてもいいと部長に言われたものの、古明祭りの手伝いのために出勤することにした。
父はしばらく入院することになったけれど母が付き添っているし、私も働いていた方が気が紛れた。
今年の屋台には優菜も手伝いとして出勤することになったから、休憩時間には二人で屋台を回ろうと約束していた。

調理に接客にと忙しそうなレストラン事業部の人たちは楽しそうに見えた。早峰フーズの花形部署は営業推進部だけど、私はレストラン事業部に憧れる。カフェから定食屋まで担当して仕事にやり甲斐がありそうだった。

「お父さんどう?」

「うん。まあなんとかなりそう。これからリハビリ生活だけどね」

無理にでも明るい声を出した。けれど優菜には無理をしていることはきっと伝わっている。治療費は保険で何とかなりそうだし、父を撥ねた加害者との交渉も保険会社と父の友人の弁護士に間に入ってもらっている。

6車線の道路を歩行者天国にして行われる古明祭りは、昔この地を治めていた武将を祀るために開催されるようになった。山車に武将の格好をした人が乗り、歩行者天国をパレードするのは目玉イベントだ。県外にも名の知れたお祭りとなっている。警備する側の人数も尋常ではない。今日は天気にも恵まれ上着が邪魔なくらいの気温だ。

「ねえ、柴田さんはどの辺を警備してるの?」

「えっと、確かあの銭湯の辺りかな。歩行者天国の終わりの方だって」

「じゃあ高木さんと同じ辺りか。このまま歩いてれば二人に会えるかもね」

優菜は何だかんだと高木さんと連絡を取り合っている。好意はないと言っていたのに、今もこうして高木さんの姿を探す優菜はもうすっかり心奪われているのではと思えてくる。

< 128 / 143 >

この作品をシェア

pagetop