PMに恋したら
「うっ……」
転がった男がうめいて立ち上がった。気づいたときには遅かった。男は今私の近くに立っている。私と目が合った男の顔は笑っていた。
今度は私が襲われる。
そう思った瞬間恐怖で体が動かなくなった。
そのとき、再び男が勢いよく地面に伏せた。今度はどこからともなく現れた警察官二人が男の背中を押さえ込んだ。暴れる男を二人がかりで地面に押しつける姿は刑事ドラマでしか見たことがないような光景だ。
いつの間にか悲鳴は歓声に変わり、気がつけば辺りには複数の警察官が集まっていた。一連の騒ぎの中心人物をあっという間に取り押さえたことで、あちこちから盛大な拍手が沸いた。
私はショックで体が動かず、警察官たちをひたすら見ていた。
数人で男を取り囲み立たせると、人混みから連行していく。最初に男を押さえ込んだ二人の警察官のうち一人が留まり私に近づいてくる。その人の顔を見た瞬間、足に力が入らなくなり優菜と同じように地面に座り込んだ。警察官は私の前に来ると片膝をついて目線の高さを合わせてくれた。
「言ったでしょ。ちゃんと守るよって」
見慣れてしまった優しい笑顔を私に向けた。
「怪我はない?」
「大丈夫……」
「頑張ったね」
そう言って彼は私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。まるで子供のような扱いだけど、今の私には一番効く慰め方だ。恐怖から解放され、ほっとして涙で目が潤む。
「これからちょっとだけ事情を聞きたいんだけど立てる?」
「うん……」
「念のため医療スタッフのいるところに連れていくよ」
腕を引っ張ってもらい立ち上がると、優菜も高木さんに連れられて人混みから抜けようとしていた。