PMに恋したら
「いや……疲れるし、頭おかしい人も相手にする仕事ですけど、嫌いではないです」
はっきりと言い切った。
「あの愚痴は高木の言葉です。俺も仕事で悩みや愚痴もあるけど、実弥ちゃんには見せたくないって思ったから」
辛い状況や思い通りにいかないこともあるだろう。ストレスも溜まっていくはず。お酒に弱くて仕事の愚痴もこぼすけれど、本質は私が好きになったシバケンと何も変わらない。嫌だとしても、日々事件事故と向き合っている。大変な職に従事しているのだ。
シバケンの言葉が嬉しくて足が震える。だけど精一杯シバケンの前で立ち続けなきゃ。かっこ悪いところは私だって見せたくない。
「職務と向き合っている柴田さんはかっこいいですよ」
私の言葉にシバケンは顔を上げた。
「俺がかっこいいですか?」
「はい! かっこいいですよ!」
私は即答する。けれどかっこいいと答えたことに急に恥ずかしさがこみ上げた。本人にストレートに本音を言ってしまった。
「いや、あの、真面目にお仕事をされていてかっこいいですし、頼りになってかっこいいし、柴田さんはほんとかっこいいです!」
もう慌ててしまい自分が何を言っているのかわからない。
「はは」
そんな私にシバケンは笑う。
「いっぱいかっこいいって言ってもらえて嬉しいです」
目を細めて笑う彼に見とれて言葉を失う。かっこいいしか言えない自分が情けない。
「あの夜のことはもう忘れますから。事故ってことで……」
「事故……か……」
少しだけ悲しそうな顔になったシバケンに私は首を傾げた。
「あの……」
「そういえば俺あだ名まで言いましたっけ? シバケンって」
「ああ……はい。知ってます」
「そうだっけかな……」