棘を包む優しい君に
 データは登録している派遣希望者の経歴、性格が書かれたもの。
 それらを適正のある職種へと振り分けていく。
 のちに派遣先への面接になる。

 こいつはパソコンの資格あり。
 番いなしでヤギか……。
 希望は事務職。事務は難しいな。

『紙への耐性チェック必要』と打ち込み、職業訓練、適正訓練の方へと振り分けた。

 こんな仕事をどう手伝わせるつもりだったのか。
 どうせオヤジは「健吾の隣で見ててくれるだけでいいから」とか都合のいいことを言ったんだろう。

 朱莉の手から離れた本。
『ハリネズミの優しい飼い方』

 そこまでして俺に気に入られたいのか。
 俺というより俺のオヤジに。


 眠っている朱莉に目を向ければ、ぷっくりと柔らかそうな唇………。

 何、考えてんだ。
 仕事しろ。仕事。

 頭を振ってパソコンに向かい直した。




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