棘を包む優しい君に
「食べ……?
 ………………副社長が変態さんでしたか!」

「は?違うに決まってるだろ!!」

 どこをどう勘違いしたらそうなるんだ。

 訂正が功を奏したのか「違うんだ」と小さくつぶやいている。
 素直なのはいいが心配になる奴だな。

 心配半分、呆れ半分の視線を向けると純粋そうな瞳と目が合った。

 視線が絡み合った後に何かを納得したような顔で頷いた朱莉は変わらず意味不明なことを言い出した。

 勘弁して欲しい。

「やっと分かりました。
 社長が言っていた意味が!
 副社長が『悩みを相談してくれる』気にさせて欲しいということですね!」

「なんでそうなるんだ。」

「だって放っておいて欲しいって顔に書いてあります。」

 分かってるなら放っておいてくれ。

 睨みつけても微笑んでいる朱莉は頭のネジが1、2本欠けていそうだ。

「放っておいて。という態度で実は構って欲しいんですよね?
 分かってますよ〜。
 食べちゃうぞって脅すまでしなくても。」

 だからどうしてそうなるんだ。

「俺は人外だぞ。」

「だから外人さんですよね?
 見た目で分かりますよ。」

 街頭の明かりに透ける髪。
 暗がりなら多少は色が濃く見えるが、太陽の元では純粋な黒には程遠い。
 シルバーと言えばいいのか、アッシュグレーと言えばいいのか……。

 肌も目も色素が薄く、そこが儚げでいいと近寄ってくる奴らは口にする。
 まぁ見た目が悪いよりもいい方がいい。

「ハーフだからな。
 確か母親はロシア系の人だ。」

 こいつに説明したところで無理だと悟ると荒療治が一番だと腹をくくった。

「この後、俺の家に来い。
 会社の寮だから他の奴らもいる。」

「そういえば社長が副社長と一緒に住んでもいいとおっしゃられていました。」

 住むわけないだろうが。

「寄るだけだ。寄るだけ。」

 他の奴らを見て目の当たりにすれば嫌でも分かるだろう。





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