天神学園の奇妙な案件
「待って!」

比較的声の細いルナにしては珍しく、彼女は喉を振り絞って蛮を呼んだ。

「待ちなさい!私を嫌いってどういう事っ?生意気よ!私より弱い未熟者の癖に!」

それでも蛮は振り向かない。

拒絶の色が、背中にありありと浮かぶ。

龍一郎にも、ティーダにも、同じ事をした。

2人は怒らなかった、嫌わなかった。

当然だ、ルナも2人も、本気ではなかったから。

本気の想いでキスしなかったし、本気の想いで受け止めなかった。

だが、蛮は本気だったのだ。

それを、本気ではない想いでキスしようとした。

蛮の逆鱗に触れた。

その事に遅いながらも気付いて。

「ごめんなさい!」

気付くと、ルナは泣きながら謝っていた。

両手で顔を覆い、泣きじゃくる。

嫌われるのが怖かったから。

取り返しのつかない事というのがどういうものなのか、生まれて初めて知ったから。

「ごめんなさい…ごめんなさい…蛮の事傷つけてごめんなさい…ごめんなさい…」

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