天神学園の奇妙な案件
蛮は尚も振り向かない。

振り向かないが、足は止まった。

「好きでないならそれでいいから…もう二度とこんな事しないでくれ…」

「ごめんなさい…」

「謝るのももういいから…」

「ごめんなさい…」

「……」

それ以上何も言わず、蛮は歩く。

彼の背中がより遠ざかるのが、酷く恐ろしく思えた。

ツェペリ一族の真祖の娘が、ただ置き去りにされるのを恐れるという奇妙な光景。

「やだっ、怒らないで!置いてかないで!お願いだから許して!」

怖い、怖い!

相手は未熟者のヴァンパイアハンターなのに、蛮は一切危害を加えようとしていないのに。

「帰るだけだよ…もう怒ってないから…」

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