天神学園の奇妙な案件
桜の結界は、外部からの侵攻侵略を防ぐと同時に、学園内にいる人外その他の、本来ならば邪悪そのものの存在の悪意や殺意を鎮静化する働きも持つ。

長年学園にいる者ならばともかく、まだ天神学園に入学したばかりの生徒達は、結界の効果が十分に得られておらず、結界が破られれば即座に邪悪の本能が呼び起こされてしまう。

結界が破れる寸前の今、悪意や殺意と鬩ぎ合っている生徒達は少なくない筈だ。

ヴラドや多くの教師達は、そんな生徒達を抑え込むべく奔走している筈。

「つまり、君達を助けている暇などないという事だよ。分かるかね?」

「汚ぇ真似しやがって!」

折れたままの左腕を庇う事もせず、右手だけで龍一郎が立ち向かう。

バルトメロイの杖の一撃を躱し、脇腹に上手く潜り込みながら廻し肘打ちを放つ撃統頂肘(げきとうちょうちゅう)!

だがそれを。

「残念」

残影を残して回避したバルトメロイは、龍一郎の背後から肩口に食らいつき、顎の力だけで彼の体を振り回して投げ飛ばす!

血飛沫を上げながら、校庭を転がる龍一郎。

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