優しい魔女は嘘をつく
プロローグ









ガラガラ……。





遠くで、遠慮がちな小さい音がしたと同時に、視界がゆっくりと開いた。



淡いオレンジの光が教室に差し込んで、部屋の中は暖かい空気に包まれていた。



紺の制服に、光を浴びて輝く小さな埃(ほこり)が、ゆっくりと積もっていく。





顔を上げて、両手を上げて大きく伸びをすると、さっき音のした方に振り向いた。





誰か、いたのだろうか。




音がした方を見ると、少しだけ戸が空いていた。



カチカチと秒針が時間を刻んでいくのを感じながら、私はしばらくぼおっと、それを見つめる。





そこでふと、机の隅に、折り目の入った紙が置かれていることに気づく。
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