優しい魔女は嘘をつく

『シンデレラ役なんでしょ?どう?困ってることとかない?』



『え……と、特には。……あ、でも、靴が無くて』



『ガラスの靴?』



『ガラスはないから、白の靴があったらなぁ、って思ってるんですけど……』





ガラスの靴、なんて、よく考えれば存在するのかも分からない。



だからせめて、それっぽい白の靴があればいいな、と思っていた。



しばらく沈黙が流れた後で、氷上先生が『あ』と思い出したように口を開いた。





『白の靴なら、あたし、持ってるよ』





驚いて、私は『え!』と声をあげる。




『貸そっか?』



『え、でも……先生から借りるなんて……』




私は首を振るけど、先生は笑って返した。
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