優しい魔女は嘘をつく
私を見つけるなり、堂本くんは「おっす」と小さく挨拶をした。
「おはよう」 私が笑顔で返すと、堂本くんは笑った。
ふと、彼が濡れた傘を持っていることに気づき、私は立ち上がって窓の外を見た。
銀杏の葉が、空の灰から降り注ぐ雫に打たれ、激しく揺れていた。
数枚がヒラヒラと舞い、濁った水溜まりの上に落ちる。その様子が、二階からでもよくわかった。
堂本くんが掃除用具入れの隣の箱に傘を入れて、席に近づいてくる。
堂本くんはわざわざ私をよけて通る。前に私は、すり抜けることが嫌いだ、と彼に言ったことがあったっけ。
気を遣ってくれているんだろうか。それとも、自分が嫌なだけ?
「あ、そうだ!昨日あの後探したらね、鞄見つけたんだよ!」
「マジで?机どこにあったんだよ」
「えっとね、屋上」