優しい魔女は嘘をつく
「お前んち、家族で旅行とか行ったりとかしないわけ?」
唐突に、堂本くんがそんなことを私に尋ねてきて、会話は止まった。
口を閉じたのは私だった。なんて答えよう、と一瞬思ったけど、すぐに言葉は出てきた。
「行かないよ」
そう言ったけど、悲しくはなかった。
一度話したら、別に隠すようなことでもないかなぁ、なんて思えてきた。
「お母さんもお父さんも、もういないから」
呟くように言って苦笑いすると、堂本くんの表情が一気に暗くなった。
そして、彼は目をそらしてから「悪い」と口にした。
私の親は、私が中学三年生の時に交通事故で死んだ。